【リレーエッセイ(トレーナー4)】
大阪大谷大学 五位塚 和也
大阪大谷大学で教員をしております、五位塚和也と申します。初めましての方は、これからどうぞ宜しくお願いいたします。お会いしたことのある方は、懐かしく思っていただけたら幸いです。さて、静岡大学の村上さんからバトンを受け取り、心理リハビリテイションにまつわる私の思い出について、思いつくままに書かせていただきます。
思い返すと、2009年の6月に所属予定だった研究室の先輩であり、なおかつ同じボランティアグループの先輩であった村上広美さんからお誘いいただき、やすらぎ荘で行われる2泊3日のキャンプに参加しました。このとき、私は動作法について授業でも習っておらず、何もわからない状態でサブトレーナーとして参加する予定でした。私は初めて心理学的な支援技法を学ぶことのできる機会にワクワクした気持ちでいました。しかし、サブトレーナーとして先輩トレーナーの方々からじっくりと見て学ぶはずだった私の予定はあっさりと覆り、(トレーナーとトレーニーの人数が一致しなかった等の理由で)急遽トレーナーをすることになりました。こうなると、ワクワクなんて言っていられません。私のワクワクは、不安や緊張のドキドキに取って代わり、さらに「自分が不安がっていたら、トレーニーの方も不安になる」という責任感(強がり?)が入り混じった、よくわからない心理状態で初めての動作法に臨みました。とにかくスーパーヴァイザーの先生から教えていただいたことを真似して取り組みましたが、自分がうまくできているのかどうかもわからない。「後でミーティングの時間があるらしいから、そのときにしっかりと教えてもらおう」と思い、1回目の動作法を終えました。そうして夜のミーティングを心待ちにしていましたが、何とそのときのキャンプはやや季節外れの台風の影響で、1日目の夕方に中止となってしまいました。文字通り、嵐のような心理リハビリテイション初体験でした。
それからというもの、何となく不全感を抱いて、動作法に関心をもつようになり、できるだけ心理リハビリテイションに参加するようになりました。2009年から数えると、心理リハビリテイションとも今年で14年の付き合いになりましたが、思い返すと初めてのキャンプ以外でも、心理リハビリテイションキャンプでは予想もできない嵐のような出来事をいつも体験しているような気がします。多様な立場の人たちがいつもとは違う環境で集団生活を過ごすのですから、何かしらハプニングが起こることも当然といえば当然なのですが…そういったハプニングが起きる度にトレーナーやスーパーヴァイザーの方々だけでなく、トレーニー、保護者の皆さんにもたくさん助けていただきました。チームワークというものをおよそ経験せず、全く社会化されていなかった私にとっては(今も?)、キャンプの場で各々が必要な役割を果たして集団が良い方向に向かっていく経験というものは、それまでの人生にないような感動や、所属感、達成感を与えてくれました。今も心理リハビリテイションを続けているのは、このような体験を求めているからだろうなと思います。
そういう経験を繰り返すと、もう少し臨機応変に対応する力が身についても良さそうなものですが、残念ながら不器用な私は未だに色々な出来事に右往左往しています。しかし、これまでの心理リハビリテイションの経験は、「何か困ったことがあっても、今自分にできることを一生懸命やっていたら、物事はきっと良い方向に進んでいく」という楽観性のようなものを私に与えてくれたように思います。この精神は心理リハビリテイションの場だけでなく、その他の臨床の場、大学教員としての職務、日常生活に至るまで、色々な場で私を助けてくれています。
学生の頃から現在に至るまで、心理リハビリテイションの場で出会った方々には、広い心で温かく育てていただき、心から感謝しています。そのおかげで少しは私も社会化されてきたように思います。今はスーパーヴァイザーとして心理リハビリテイションに関わることが多くなっていますが、私を育てていただいた皆さんのように、今度は私がトレーナーの学生さんや現職教員の方々に色々なことを伝えていけたらと思っています。
何だかまとまらない話になってしまいましたが、思い返すと懐かしく温かい気持ちになりました。これからも心理リハビリテイションの場で皆さんと学び合い、ともに育っていければ嬉しいです。