【リレーエッセイ(保護者1)】学齢期の終わりを迎えて
静岡心理リハビリテイション親の会 石原浩枝
息子が在籍していた特別支援学校では、親の会主催の訓練会を行っていたので就学する前から毎月学校を訪れていました。訓練を始めて間もなかったので、訓練に行っていると言うよりも遊びの合間に訓練をして、受け入れる経験を積んでいるような時期に入学式を迎えました。幸か不幸か学校にも遊具にも慣れることができていたのですが、厳粛な入学式で “ボールプールであそびたい~!” と叫び続ける息子を、動作法の先生方が一緒に見守って下さっていたことは忘れられない思い出の一つです。
入学してから自立活動で動作法が活用されていることを知り、動作法が全てではないことも知ると、特別支援教育ってどんな指導をするのか興味を持つようになりました。訓練会とは別に保護者だけの勉強会を始めて、特別支援教育や動作法の理論を知るようになると、面談で一方的に提示されていた「個別指導計画」を見直すようになりました。(メンドクサイ保護者の一人だったことでしょう)
社会全体の人口が減少し、女性の社会進出が望まれるようになり、子ども達が利用する福祉サービスが充実して、取り巻く環境が大きく変わってきた時代を過ごしてきたように思います。子供たちの成長を、共に見守ってくれる人が増えたことは喜ばしいのですが『コツコツと積み上げていきましょう』という動作法に興味を持つ保護者が少なくなったことが残念です。
特別支援学校でも、働き方改革と、ベテラン教職員の定年退職が相次ぎ、学校運営も変わったように感じました。就業時間外での研修等の参加が制限されるようになったからでしょうか、土曜日に行われる訓練会を訪れる先生が徐々に減ってきています。
高等部に進学すると、それまでに積み重ねてきた指導方法を継続しない指導に替わり、余りの状況の変化に体調を崩したのは息子だけではないように聞いています。肢体不自由の専門性が薄いことに悶々としたまま、新型コロナウィルスが蔓延して当たり前に過ごしてきた日常が当たり前ではなくなりました。コロナ禍の2年間、修学旅行は中止になり、校外学習さえ行われなかったのは、新型コロナウィルスが原因だけではないように思っています。一人でも多く「高等部良かったわ~」と言われるように、新しい学習指導要領と共に変わっていってほしいと願っています。
卒業式を終え、新しい生活をシュミレーションしてみる「卒業すると身体のケアをする機会がなくなる」と先輩方が話していたのを実感します。身体の成長と共に使い難さも積み重ねてきて、動かさなければ動かそうとしない息子にとっては動作法を卒業することは考えられません。いつ終わるのか見通しの無いコロナ禍ではありますが、訓練の機会を捻り出し大切に積み重ねていこうと決意を新たにしています。
※このリレーエッセイは、全国各地のトレーニー・トレーナー・保護者が徒然なるままに思いを綴っていきます。保護者、次は岡山の田中さんです。